味噌の豆知識
味噌王国発祥の地 信州松本の味噌伝説
筑摩郡近府県(きんぷののあがた)である神林(現松本市)の豪族に生まれた臨済宗の高僧無本覚心(1207〜1298)は15歳で戸隠別院天台宗神宮院厳殿寺に修学 19歳で奈良の東大寺に、ついで大輪三輪寺に真言密教を学んだ後1235年高野山に登りました。そして、1249年宋に渡り径山の興聖万寿寺で「未醤」の醸造を修得したと言われています。この様に味噌と松本の関わりは770年もの歴史があります。
歴史的背景
信州は山国であり古くより食塩の確保、保存に苦労しました。
味噌という形で食塩の保存を測ったことは、賢明な先人の知恵でしょう。信州の中心に当たる信州新町付近では良質な大豆が採れ、長野市から見て西の山から採れる大豆ということで「西山大豆」と称され重宝されました。気象的にも信州は湿度が低く、大豆たんぱくを分解する糀を作るのに好適であり山紫水明、空気がきれいで水も清澄です。
戦後の大発展
戦後になり米味噌の特徴である山吹色の艶のある味噌を首都圏に出荷して好評を得ました。長野県下の企業者が一体となって協同組合を作り、「信州味噌」団体登録商標を登録し、長野県も県条例を制定して業界をバックアップ。組合は10名余の研究員を擁する独自の研究所を併設し、味噌生産の科学化を計り酵母菌、乳酸菌を自家培養して供給するなど信州味噌の品質向上を目指し現在も続いています。その結果生産量は飛躍的に発展し年産19万t全国生産量の30%余りを出荷するトップ生産県となりました。
分類上の信州味噌
- 「こうじ」を作るでんぷん原料による分類では「米味噌」に属します。他に麦味噌、豆味噌、調合味噌があります。
- 味による分類では「辛口味噌」に入ります。塩分は11.5%〜12.5%位が標準。
- 色による分類では「淡色系味噌」といわれ米糀による独特の山吹色を呈します。仙台、八丁味噌は赤色・赤黒色であり、京都の白味噌は白色を呈します。
「米こうじ」による大豆たんぱく質の分解
信州味噌の最大の特徴は「米こうじ」により大豆たんぱく質を分解し、いろいろなアミノ酸を生成し旨みと芳香を醸し出すところにあります。
「こうじ」から生まれる色々な酵素がたんぱく質やでんぷんを分解して、アミノ酸、糖分、アルコ−ル、乳酸等を生成する過程を発酵と言い、それを利用して「もの」をつくるのが醸造です。最近学問的な解析研究が進む中でその食品としての機能性、優秀性が認識されつつあります。
魅力発信!味噌の食文化
最近アメリカを中心に健康志向と日本食ブームの影響により味噌の海外での需要が旺盛です。植物性たんぱく質の摂取を中心とした伝統的な日本食が見直され味噌の魅力が世界中に広がっています。味噌の原料は大豆と麹と食塩のみとシンプル。風土や気候でいろいろな味や色の違いが出るほど奥が深い日本の伝統です。
「味」→「うまい」、「噌」→「うるさいほど味が豊かでおいしい」という意味があり、ウマくて深い味わいといった言葉に表れています。
ユネスコ無形文化遺産
平成25年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
「和食」の4つの特徴
- (1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
- 日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。
- (2)健康的な食生活を支える栄養バランス
- 一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。
- (3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
- 食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。
- (4)正月などの年中行事との密接な関わり
- 日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。
(農林水産省 発表資料より)